著者:吉村昭
605円(税込)
作品詳細
●推薦者
河野寛子/未来屋書店宇品店 (広島県)
●推薦コメント
衝撃的です。なぜこれまで映画化されてこなかったのかが不思議なほど、面白い作品です。いわゆるホラーやサスペンスのジャンルには属さない、“怖さ”の空気を存分に含み、その時代背景や環境をしっかりと根拠に置いた、とてつもない映像が描かれています。
村社会ならではの共同体としての暮らしぶりや決断は、今では考えられないものばかりです。しかしそれは当時の者からすれば至極当然なこととし行う生き方であることを、吉村昭はいとも易しい文体で綴り、当然のものとし描ききっていることにまた恐れを感じさせられます。
海の向こうから訪れるものを、我々は受け入れる文化で生きてきたからこそ、この破船の船が何を運んでくるのか。福の神か祟り神か。
2020年、海の向こうからやってきたウイルスが現在も続いている今なら、この本の“恐れ”の意味も時代を超えて理解できる恐怖として、ぜひ紹介したい一冊として取り上げました。
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※今年の夏「ゾッとする本」コーナーのイチオシとして展開しましたが、地方のいち書店だけでは伝え切れません。どうか全国の書店の力をお借りし、推薦と、もっと欲を言えば映画化になることを期待しています。
(パルム・ドール賞をとった楢山節考のような、それ以上の作品が見れるはずです)
※文体の易しさと内容の深さ。また、これだけの内容でありながら文章の読みやすさに驚きます。こちら中学生から大人まで、十分に楽しめるものです。
※表紙の装丁は日本画家の小野具定なのですが、その作品と破船の内容が「=」のような表現同士として見事です。